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働きたくないイタチと言葉がわかるロボット 人工知能から考える「人と言葉」

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なぜAIは、囲碁に勝てるのに、簡単な文がわからないの?
そもそも、言葉がわかるって、どういうこと?

中高生から大人まで「言葉を扱う機械」のしくみと、私たちの「わかり方」を考える。

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「つまり、僕らはロボットにしてほしいことを言うだけで、あとはロボットが勝手にやってくれる。それが一番いいってことだね」
「いいね。そうすれば、誰も働かなくてよくなるね」
イタチたちはみなこの計画にうっとりして、なんてすてきなのだろうと思いました。
(序章「ことの始まり」より)
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なんでも言うことを聞いてくれるロボットを作ることにしたイタチ村のイタチたち。
彼らは、「言葉がわかる機械ができたらしい」といううわさを聞いては、フクロウ村やアリ村や、
その他のあちこちの村へ、それがどのようなものかを見に行きます。ところが、どのロボットも
「言葉の意味」を理解していないようなのです――

この本では、「言葉がわかる機械」をめぐるイタチたちの物語と、
実際の「言葉を扱う人工知能」のやさしい解説を通して、
そうした機械が「意味がわかっていると言えるのか」を考えていきます。

はたして、イタチたちは何でもできるロボットを完成させ、ひだりうちわで暮らせるようになるのでしょうか?

ロボットだけでなく、時に私たち人間も、言葉の理解に失敗することがありますが、なぜ、「言葉を理解すること」は、
簡単なように見えて、難しいのでしょうか?

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――いま、さまざまな人がさまざまな機会に、「言葉を理解する機械がとうとう完成した」とか
「今はできていないけれど、もうすぐできるだろう」とか「機械には本当の意味で言葉を理解することはできない」
ということを言っています。いったいどれが正しいのでしょうか?
――私たちは普段から、「あの人が何を言っているかが理解できた」とか「あの言葉の意味が分からない」
ということをよく口にします。しかし、自分がそう言うとき、どんな意味で言っているか、きちんと意識しているでしょうか?
実際のところ、私たちはさまざまなことを、「言葉が分かる」という便利な表現の中に放り込んでしまっています。
それらを一つひとつ取り出してみないことには、「言葉が分かっているかどうか」という問題に答えを出すことはできません。
――この本では、「言葉が分かる」という言葉の意味を考えていくことで、機械のこと、そして人間である
私たち自身のことを探っていきたいと思います。
――(問題の一部を知るだけでも)みなさんが、「人と機械の知性」について考えたり、またご自身の
「言葉の使い方」や「理解の仕方」を振り返ったりする手がかりになると信じています。
(序章「ことの始まり」より)
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[目次]
第1 章 言葉が聞き取れること
音声と音素
機械による音声認識と、機械の「お勉強」
人間による「聞き取り」の習得
人と同じようにしないとダメ?

第2 章 おしゃべりができること
チューリング・テスト
「会話をする機械」の現状
ぼんやりしたやりとり、ぼんやりした理解
「真偽が問われる」レベルでの言語理解

第3 章 質問に正しく答えること
質問に答える機械
「言葉の世界」の中だけでの「理解」

第4 章 言葉と外の世界を関係づけられること
機械が画像を「認識する」
深層学習の基本を少しだけ
画像・動画の「表現力」の限界
外界の情報と「文の真偽」との関係

第5 章 文と文との論理的な関係が分かること(その一)
論理って何?
推論と意味理解
「論理的に考える」ことのじゃまになるもの
機械による論理的な判断:含意関係認識

第6 章 文と文との論理的な関係が分かること(その二)
文を推論パターンに当てはめる
文と文の類似度を手掛かりにする

第7 章 単語の意味についての知識を持っていること
「全部教えたらいいじゃない」
意味に関する知識の自動獲得
単語の意味は、周辺の単語で決まるのか?
句や文をベクトル化する

第8 章 話し手の意図を推測すること
意味と意図
曖昧性の解消
会話的含み
意図を伝えることの難しさ

終章 その後のイタチたち
「何でもできるロボット」の難しさ
では、私たち人間は?

あとがき
註と参考文献

272 pages, Paperback

Published June 17, 2017

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川添愛

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Profile Image for Erika.
2,560 reviews74 followers
September 8, 2020
「言葉が理解できる」とは具体的にどういう事なのか、イタチたちをはじめとするあらゆる生き物達(魚、アリ、フクロウ、オコジョ、タヌキ達...)を巻き込んだ「ロボット作り」の話を通して解説する本。
とても読みやすいし、各章の終わりにはもう少し詳しく解説されているので、今後どのような文献でさらに知識を増やせばいいのかもわかる。

私はロボットの発展を知りたくて、題名の「人工知能」にひかれて借りた。が、「人工知能」とその研究に関する知識を得る代わりに、「ロボットが人間と全く同じような会話ができるようになるためにはどのような条件付けが必要か」という課題から、「私たちが普通に使う言語の複雑さ」がよく分かった。
(いや、そもそもその段階がいかに難しいか分かっただけでも、完璧な「人工知能」が今は不可能だという知識を得られた、とも言えるかも)

人間同士でも文脈を読み間違えてミスコミュニケーションが発生するのに(著者がいうようにTwitterで文字ベースのコミュニケーションが増えた昨今は特に)、ロボットが完璧に人間的な会話をできるようになるなんて、夢のまた夢なのでは。

ちなみに、何故主人公が「イタチ」なのかは本を最後まで読んだ人ならわかる、という著者のあとがきを読み、暫く考え、最後の段落をもう一回見返し、やっと分かった。
このスピードの遅さ、私に「言語の理解能力がある」と100%言えるだろうか…???
(あると思いたい。けれど、文脈や行間から物事を理解するって凄く難しいんだなと痛感。こ���場���は、日本語のIdiom(日本語で何だっけ…熟語?)という「外の知識」がないと理解できないわけだし。人生は常に勉強だ。)

それと、「理論言語学」という分野をちゃんと知る事ができたのも嬉しい。
著者曰く、「外国語や語源の研究ではなくて、日本語を対象にして、私たちが何故言葉を話したり理解したりできるのかを研究する」学問らしい。
面白い。
著者の他の作品白と黒のとびらも借りてみよう。

(note:この本を知った切っ掛け:多和田葉子の百年の散歩(新潮文庫)の表紙デザインの花松あゆみを検索してみたら、この本がヒットした。)
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